大晦日。年の瀬を越せない男が、日ごろ目をかけてくれる人から米と小袖を施してもらい、帰って行く。米俵に小袖をかけた姿が、ちょうど女を背負っているように見えるので・・・。
伊勢神宮へ参詣の旅僧が、別保の松原で、たくさんの尺八をつけた一本の松を見つけ、楽阿弥という、非業の死を遂げた尺八吹きの亡霊に出会う。
連歌の初心講の当番になったが貧乏で催しの準備ができない男は、仲間を語らって盗みを企てる。めざす邸に忍び込むが、座敷の床の懐紙に記された句を読むうちに・・・。
住持は新発意に留守を言いつけ、花見禁制を申し渡して出かけるが、大勢の花見客が押しかけると断りきれず、招じ入れてともに酒宴を催してしまう。
百歳の祖父が恋わずらいと聞いた二人の孫が心配して本人に真相を尋ねると、初めは恥じて隠していた祖父も、ついに、恋の相手は刑部三郎の娘おとであると告白する・・・。
妻には、持仏堂に篭り坐禅すると偽り、太郎冠者を身代わりに仕立てた後、愛人・花子との逢瀬を楽しんだ男。朝帰りして、坐禅衾の中に妻が入れ替わっているとも知らず、一夜の様子を話しだす。
正月、弓の弦に張る松脂を煉る行事に、松脂の精が出現し、松脂のめでたいいわれを語って聞かせ、みずから煉り納める。
名を問われて、ふと出まかせに「腹立てずの正直坊」と名乗った旅僧は、さんざんに愚弄され、ついに堪忍袋の緒が切れる。
加賀の百姓は菊酒、越前の百姓は鏡餅を領主の館に納め、年貢によそえた歌や奇抜な歌を詠み、めでたく舞い納める。
ある男が成人した一人息子を連れて、知合いの老尼に烏帽子親になってくれと頼む。老尼は庵太郎比丘貞と命名して引き出物を贈り、乞われるままにめでたく舞を舞う。