鞍馬へ参詣した主従。利根草の蓼(たで)を食べた主人が太刀を置き忘れ、鈍根草の茗荷を食べた太郎冠者がそれを拾い、鈍根草のいわれを主人に語って聞かせる。
春のひと時、花見をしていた橘の精一族と茄子の精一族が、和歌の争いから乱闘になるが、嵐に見舞われ、あまりの寒さにそれぞれの棲みかに退散する。
檀家で出くわした僧と巫女が、たがいに読経と神楽で競うが、巫女の色香に見ほれた僧は、神楽に興じてしまう。
説教の下手な僧が泣き役の老尼をやとって連れてゆくが、老尼は寝込んでしまって役に立たず、そのくせ報酬だけは要求するので、僧は怒って拒絶する。
うぐいすを寵愛する稚児のために、野へ出て野鳥でも刺そうとする家人が、持ち主のあるうぐいすを欲しさに太刀も刀も取られてしまう。
盲目の夫は、川上の地蔵に参篭した甲斐あって目があくが、地蔵のお告げは「連れ添う妻は悪縁ゆえ離縁せよ」と条件をつける。しかし二人は別れられず、夫は再び盲目に。
法皇の使う牛を盗んだ男が、わが子の訴えで捕えられるが、その子の才覚で放免される。
妻が市で商う酒屋へ飲みに来て、商売の邪魔をする夫。妻は腹をたて、大酒を飲ませて報復する。
塩飽の藤造という男が、茶屋の女を相手に「うるさし」についての語源争い。和泉流宗家の専有曲。
主人に無断で都見物をしてきた太郎冠者が、祇園の花見の様子を身ぶりおもしろく主人に話して聞かせる。