閻魔大王は六道の辻で鷹匠の政頼に出会い、鬼たちを使って鷹狩りをさせ、獲物の雉子を食い、政頼を三年間娑婆へ帰してやる。
早暁、一番鶏が歌ったら起こせと主人から言いつけられていた太郎冠者。油断して寝過ごした苦しまぎれの言い訳に、鶏は「鳴く」もので「歌う」ものではないと言い張り、古歌を引き合いに主人と論争。
元料理人のにわか出家と、元出家のにわか料理人が、同じ家に召抱えられ、互いの本職を教え合う。
鎌倉の膏薬練と上方の膏薬練が道で出会い、互いの系図を争い、吸出し膏の効力を競い合う。都の公家政権と鎌倉の新興武家政権の対立を風刺している。
淀へ使いを言いつけられた臆病な太郎冠者は、夜道で物影におびえて逃げ帰り、大勢の盗賊に出会って戦ったと得意満面で主人に話すが・・・。
修行を終えて帰郷した若い山伏が、孝行に祖父の曲がった腰を伸ばしてやろうと懸命に祈るが、祖父の腰は伸びすぎて・・・。
宝くらべに必要な宝物を買いにやらされた太郎冠者は、蓬莱の島の鬼が持っていた隠れ笠だといって古笠を売りつけられる。
盗みに入った家の座敷で、寝ている赤ん坊を見つけ、その愛らしさに、盗みに入ったことも忘れて、あやして戯れる人の善い盗人。
播磨の国・清水の浦で、旅僧の前に現れた大蛸の亡霊が、漁師たちに食べられてしまった無念さを物語る。
供も連れずに北野天満宮の御手洗祭に出た大名が、通りがかりの昆布売に太刀を持たせるが、逆に太刀で脅されさまざまな音曲で昆布を売らされる。