野瀬の郡で、旅僧の回向に現れた野老(山いも)の精が、掘り起こされ村人に食べられた最期の苦患を物語る。
斎(食事)の出る檀家と布施(お金)の出る檀家の、どちらへ行こうかと迷ううちに遅刻した出家が、双方からなじられる。
寺の茶会に招かれた男についてきた新発意は、小川を飛び越えられず、川にはまって濡れ鼠になる。
匂当が供の座頭を連れて川にさしかかり、石を投げて浅瀬を探る。この様子を見たいたずら者が、座頭に背負われて川を渡ってしまう。
勝気で口数の多い妻にののしられる吃りの夫は、謡がかりで抗弁するが、逆に妻の怒りを買ってしまう。
鞍馬へ参詣した主従。利根草の蓼(たで)を食べた主人が太刀を置き忘れ、鈍根草の茗荷を食べた太郎冠者がそれを拾い、鈍根草のいわれを主人に語って聞かせる。
三年ぶりに帰国した鈍太郎を、下京の本妻と上京の愛人が奪い合うが、鈍太郎は双方に条件をつけて和解させ、二人の手車に乗って意気揚々と帰る。
大津松本の市に現れたすっぱは、田舎者の持っている長光の太刀を自分のものだと言い張るが、代官の機転で見破られてしまう。
説教の下手な僧が泣き役の老尼をやとって連れてゆくが、老尼は寝込んでしまって役に立たず、そのくせ報酬だけは要求するので、僧は怒って拒絶する。
適当に応答する意の「長刀応答」を取り違えた太郎冠者は、本物の長刀を振り回して花見に来た客を驚かす。