若菜

WAKANA

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3月、4月ののオススメといえば、やっぱり「若菜」でした!

狂言の分類は、シテ(主役)が誰か、によって分類されることが多いのですが、この場合は「果報物」というとおり、果報者がシテです。果報者、というのはただ地位が高いとか、経済的に豊か、というだけでなく、心も豊かで富んでいる人のことです。

そんな果報者が、春の野遊びに従者の海阿弥(かいあみ)を連れてでかけます。
のどかな景色を楽しんでいるところに、花摘み女たちが、手に若菜を持って登場します。
そこで、果報者は海阿弥に命じて、花摘み女たちを酒宴に招きます。
そして皆で酒を楽しみ、謡い、舞い、日暮れとともに帰っていくことになるわけです。

決して大笑いするような演目ではありませんが、とても風流な楽しみがある曲だなあ、としみじみ思ってしまいました。花摘み女たちは、それぞれ若菜と花の作り物を手に持ち、謡いながら舞台に登場します。「女」の装束はとても華やかで、(登場人物紹介「女」ご参照ください) さらに少人数で演じられる演目が多い中、そんな華やかな「女」が5人、6人と登場するのですから、見た目だけでも心が浮き立つではありませんか!

(それが年配の男性が扮する「女」であっても…(笑)。)

具体的な小道具が少ない狂言ですが、若菜の作り物に装束の華やかさが加わって、春の雰囲気を満喫していただけるのではないかな、と思います。そして春の景色が思い浮かべることができたら、一緒に酒宴をしている気持ちで、のんびり舞台の上を観ていただけたらいいなあ、と思うのです。

ついでに言うと「どうせなら、きれいな女の人と、きれいな景色を楽しみたい」という男性の単純な気持ちを考えると、ふと果報者が可愛く見えたりもしますし。静かな「ふふふ」という笑いを噛みしめられる演目、ということで「春」のくくりで2ヶ月共通のオススメとさせていただきました!